連載 #16 「今年の桜」

来年の桜は、誰にも遠慮なく、ゆっくりと観れますように。

写真家からみえる景色 | bitokurashi

写真で日常を切り取る、びとくらし 「びとくらし」のトップのメイン写真をご提供いただいている、嵐祥子さん。 日常の生活が、いつもの日常とはちょっと違う今年の春。 彼女はどの様にこの春を写真に収めたのでしょうか? その切り取り方や毎日の暮らし方を少しのぞかせていただきます。 「今年の桜」 日々更新される、新型コロナウイルス感染に関する発表やニュース。 いろいろな変更を待ったなしで対応していると「なかなか疲れるな」と感じる日が続いています。 4月の初旬。 仕事帰りに利用した電車は空いている時間帯で、向かい側の車窓の景色が、座っていても良く見えました。「このタイミングだと、きっと桜がきれいだろうな」と、心の中でちょっと期待していました。 窓の外は、沿線に植えられたソメイヨシノの並木が、期待どおりの満開に。 うすいピンク色の花びらが太陽に照らされていると、流れていく景色がとても明るく感じられ、スマホの画面を熱心に見ていたひとも顔をあげるほどでした。 先行きが不透明で不安な気持ちの今年も、春を迎えていつもどおりのうつくしい桜を見ることが出来て、つかの間、心の中でお花見をしました。 4月中旬。 強い雨と風の日がありました。 雪のように散っていく花びらを見ながら「いつもなら地元の桜が散っても、奈良の吉野山や、北へ向かう桜前線の話題が、天気予報を賑わすのになぁ」と、開花やお花見の話題が控えめだった今年の桜を、なごり惜しく想いました。 ちょうどそのころ、住まいのある兵庫県には政府から非常事態宣言が出され、その数日後に県から「休業要請」が出されました。 その影響でわたしの仕事はすべてキャンセルになったので、保育園に通う息子を、家で保育することになりました。 3週間ほど外出自粛となるので、変化の少ない毎日を過ごすことになるかもしれません。 それでも、日常の些細なことが大切な時間だと思う意味でも、記録的な意味でも、日々の写真を撮ろうと思いました。 数日経ってみて、スマホの写真アルバムを開けると、主に息子と、まったくフォトジェニックでないお昼ご飯、パイナップルの落書き、ベランダで育てているサボテン、工事現場の重機、草むらのてんとう虫などが並びました。

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嵐 祥子 | Arashi Shoko

フリーランスWebライター兼フォトグラファー、嵐祥子のサイトです。 同名で、写真作品も制作しています。