連載 #5 「みどりいろの季節に」

歩いているだけで気持ちが良い季節。それももう過ぎようとしています。

写真家からみえる景色 | bitokurashi

写真で日常を切り取る、びとくらし 「びとくらし」のトップのメイン写真をいつもご提供いただいている、嵐祥子さん。 いつもの日常も切り取り方、感じ方次第で特別な日になることもたくさんあります。 そんな切り取り方を少しのぞかせていただきます。 「みどりいろの季節に」 常緑樹に混じり青葉がひらいて、 いつも見ている山々は、みずみずしい若みどりいろにつつまれました。 陽が出ている時間が長くなり、木陰を探して歩きたい季節です。 それでも午前中の空気はまだ爽やかで涼しく、休日、近所の公園へ散歩に出かけています。 公園を歩いていると、足もとがなんだかフカフカしているなと感じ、 下を見ると芝生やシロツメクサが育ってきています。 上を見ると青もみじ、ケヤキやプラタナスが黄みどりいろの葉を広げていて、 照りかえる光は目を閉じてもまぶしいほどです。 5月のある日。 息子が保育園のお散歩に行った公園で、10cmほどの背丈の草をたくさんつみ、 ナイロン袋に入れ「おみやげだよ」と手渡してくれました。 どっさりの草の束…公園に群生している、あのお花かな…と推測。 小さな手でつんでくれた様子を想像すると、とても大切なものに思え、その草花の名前を知りたいなと植物図鑑をひらきました。 昔から身近な場所に、ピンク、白、藍いろなどの小さなかわいい花を咲かせている「庭石菖(にわぜきしょう)」とわかりました。 花言葉は「繁栄、豊かな感情、豊富」と贈りものにぴったりでした。 水差しがわりのコップに活けてしばらく、葉っぱのあいだから見えてきたのはうす紫いろのつぼみ。 そして6枚の花びらが開きました。 人生で何度目かの花束。 素朴な野の花も良いものです。

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嵐 祥子 | Arashi Shoko

フリーランスWebライター兼フォトグラファー、嵐祥子のサイトです。 同名で、写真作品も制作しています。