連載 #10 「秋の虹」

台風の影響が大きいここ数年の秋。
それでも季節はおかまいなしに進んで行きます。
力不足を感じますが、目の前の自分たちが出来ることをやっていくしかないのだなと、繰り返し考えています。

写真家からみえる景色 | bitokurashi

写真で日常を切り取る、びとくらし 「びとくらし」のトップのメイン写真をいつもご提供いただいている、嵐祥子さん。 いつもの日常も切り取り方、感じ方次第で特別な日になることもたくさんあります。 そんな切り取り方を少しのぞかせていただきます。 「秋の虹」 10月に入ると、東の窓から差し込む朝陽の角度が変わり、光が部屋の中まで届くように伸びてきました。 その金色がかった光が、身体にあたる感覚の「暑い」から「暖かい」への変化に、 秋の訪れを実感しています。 強い台風が来る前に、長袖のカーディガンや冬用の温かいお布団を干して、少しずつ冬じたくを始めました。 その大型台風19号が近畿地方を通過した次の日、お天気は晴れ。 鉄道の各路線は通常運行に戻り、予定通り仕事へ向かうことができました。 仕事は運動会の撮影。 会場に到着してしばらくすると、にわか雨がパラパラと降ってきました。 空の半分は青空、あとの半分は暗くて雲が広がる空。 「また雨は困るな。長引かなければ良いのだけど」と考えていたら、 いつの間にかおおきな虹が出ていました。 日本では「赤・だいだい・黃・緑・青・藍・紫」の、7色とされている虹。 虹のアーチは濃くなったり薄くなったりしながら、そこにいるみなさんを笑顔にしてくれていました。 「みて」「ほら、虹だよ」とそれぞれに教えあったり、「きれいだね」と写真を撮る姿がたくさん見られ、 それは気持ちが明るくなる光景でした。 そのとき、わたしのスマートフォンに友人からメッセージが届きました。 「おはよう。うすい虹がでてる」と、添えられた虹の写真。 友人とは離れた場所にいましたが、同じ市内にいたので、同じように虹を見ることができました。 うつくしいものや素敵なものを見て、誰かに分けたくなる、伝えたくなるその気持ちが、とてもうれしく感じられました。 そして同じ日、台風による災害で困っている方が、たくさんいらっしゃいました。 この短い文章の中では、表現しがたい状況が今も続いています。 会場では、自分たちがいつもどおりの朝を迎えられたことに感謝し、 お祈りをしてから運動会が開かれました。 希望や幸運の象徴とされる、虹。 「たいへんな思いをされている方々が、日常を取り戻せる日が、すこしでも早く訪れますように」 そっと、秋の虹に願いました。

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嵐 祥子 | Arashi Shoko

フリーランスWebライター兼フォトグラファー、嵐祥子のサイトです。 同名で、写真作品も制作しています。