連載 #34「アサギマダラに会いに」

旅の途中のアサギマダラ。コロナ禍でもたくさんの人を楽しませてくれました。
旅立ちを見送ると、涼しい季節がやってきました。

写真とエッセイ「アサギマダラに会いに」 | bitokurashi

写真で日常を切り取る、びとくらし。 写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。 スマートフォンの普及で写真を撮る機会が多くなった昨今ですが、何を写すか、どう感じるか、など、写真家の嵐さん自身を優しく感じることができる心地の良いエッセイです。 「アサギマダラに会いに」 10月のはじめごろ、近くの森へ「旅するチョウ」「渡りチョウ」として有名な「アサギマダラ」に会いにいってきました。 先月の記事「森の道」で下見撮影にいったとき、森の中の看板に「アサギマダラの飛来について」とお知らせがありました。 アサギマダラ… 合唱曲の「蝶が海峡を渡る」のモデルのチョウで、関西でもその飛来がニュースになったり、某人気アニメに出てくる「蝶屋敷」に登場したり、その名前はよく耳にするものの、実物はまだ見たことがありませんでした。 アサギマダラは長距離を移動する不思議なチョウで、春に沖縄・台湾などで羽化して北上、秋には日本各地で羽化した個体がいっせいに南下し、本州を横断しているそう。 その移動は30年以上前から調査されていて、中には約3ヶ月をかけて、和歌山県から高知県を経て香港までの約2500kmを移動した、という記録もあるそうです。 昆虫は得意ではないのですが「こんな身近に誘蝶(ゆうちょう)している場所があるなら、わたしも見てみたい!」と、その時期を楽しみに待ちました。 そして、もうひとつ見たことがなかった「秋の七草」の「フジバカマ」。 春の七草は食べる野菜たちですが、秋の七草は鑑賞する草花たちです。 フジバカマは古い時代から鑑賞に生薬にと親しまれていたそうですが、いまは自生地だった川辺や斜面の整備で環境が変わり、自然にはほとんど見られなくなっているそうです。 このお花はアサギマダラが好む蜜のひとつで、長い旅の途中に立ち寄れるよう、以前から森の一部に場所づくり、苗づくり、植付けをして準備されていたとのこと。そのような場所は他にも全国各地にたくさんあるようです。 フジバカマが開花した、と情報が入ったのでさっそく出向くと、うすいピンクのかわいらしい小さな花が咲き始めていました。 その周りには5、6匹ほどのアサギマダラが、ふわりふわりと優雅に舞っていました。 そこにいた他のチョウとスピードを比較しても、とてもゆっくりに見えます。

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嵐 祥子 | Arashi Shoko

フリーランスWebライター兼フォトグラファー、嵐祥子のサイトです。 同名で、写真作品も制作しています。