連載 #27 「ひととき」

お花がどんどん咲いていく、そんな印象の3月でした。

写真家からみえる景色 | bitokurashi

写真で日常を切り取る、びとくらし 「びとくらし」サイトトップのメイン写真をご提供いただいている、嵐祥子さん。 写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。 写真で日常を切り取る、びとくらし 「びとくらし」サイトトップのメイン写真をご提供いただいている、嵐祥子さん。 写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。 「ひととき」 朝、出勤中のあわただしい時間。 仕事の予定が急きょ変更になったと連絡があり、3時間ほどぽっかりと空き時間ができました。 急ぎ足で移動していた速度をゆるめ、どう過ごそうかと考えて「そういえば、今朝はまだコーヒーを飲んでいない。とりあえず一杯飲もう」と、駅のコンコースにあるカフェに入ることにしました。 注文口で店員さんにコーヒーのサイズを聞かれたとき「この感じはすごくひさしぶりだ」と思い、そういえばここへ来たのは一年ぶりか、それ以上前になるかもしれないと、時の流れの早さにおどろきました。 コーヒーの出来あがりを待ちながら、コロナ禍で過ごした今年度は、本当にあっというまに過ぎてしまったなぁと、しみじみと振りかえりました。 ソーシャルディスタンスをとられた店内はゆったりとした席数で、イートインはまばらな時間帯。 勉強をしたり、書き物をしたり、常連さんが店員さんと話していたり、それぞれが思い思いに静かに過ごしていました。 コンコース側には大きな窓があり、外の様子がよく見えるようになっています。 わたしはすみっこのソファ席に落ち着き、窓の外をいき交うひとびとが、スピードをゆるめずに足早に通り過ぎていくのを「さっきまでわたしもその中にいたんだ」と、不思議な気持ちで眺めていました。 店内に流れるBGMはゆっくりな曲調のものがセレクトされ、エスプレッソマシンの音とその香ばしいかおり、雰囲気をこわさないように静かにたてられる食器の音。 それらに囲まれて「外と中では、ずいぶん時間の流れが違うように感じるな」と心地よく過ごすうちに、同じ敷地内にあるショッピングモールの開店時間になり、あたりが明るくなりました。 カフェ店内もお客さんが増えてきたので、ちょっと早めに出発し、大きなミモザの木の下を通って仕事場に向かおうかと、お店をあとにしました。

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嵐 祥子 | Arashi Shoko

フリーランスWebライター兼フォトグラファー、嵐祥子のサイトです。 同名で、写真作品も制作しています。